
掲載日:2008年12月25日

ワイドレシーバーのコーチとして、オフェンスパスユニットを見てきた山本洋。PLAYER'S VOICE番外編で取り上げたヘッドトレーナー・大隈重信とはまた違ったコーチという立場から、フロンティアーズの2008年のシーズンを振り返ってもらった。前編では、2008年のシーズンで見えてきたフロンティアーズ進化の理由に迫った。
— 2008年のシーズン初めに、どのような目標を立てていらっしゃいましたか?
2007年のシーズンを振り返ったときに、ファンダメンタルのミスが多かったんです。アサインメントやキャッチングのミスなど、練習のときにできていないことが、そっくりそのまま試合に出てしまっていました。まだ、プレーの精度は低かったです。
なので、ファンダメンタルのミスを減らすことがやはり最重要課題で、まずはキャッチングのミスを減らすことを意識しました。
— その課題を、選手とはどのように共有されましたか?
選手には、課題としてきちんと認識してもらうというのが大事なので、日々の練習レビューをするときに、一人ひとりに課題を与え、意識してもらうようにしました。
ただし、その課題にどう取り組んで、どのように改善していくかは選手に任せてあります。練習後にパスのキャッチの練習をする選手もいれば、コーチを捕まえて、アドバイスをもらう選手がいたり・・・と選手それぞれで、課題の解決方法が異なります。
とにかく、課題を認識して、きちんと取り組むこと。それだけは、必ず守るようにしてもらっています。
— 選手たちと共有した課題は、春から秋にかけて、着実に成果として見えてきましたか?
そうですね。まずはアサイメントミスを無くすという課題については去年から新しいオフェンスのシステムを導入していますが、1年以上経ち、精度も理解度も上がってきたように感じます。
また、先ほどから話しているとおり、キャッチングとファンダメンタルのミスをなくすことを意識したほか、特にDBがマンツーマンでカバーしてきたとき使ういろんなテクニックを選手それぞれが伸ばしたり、新しいものを吸収するように注力しました。そこは、成果として見えてきたところがありますね。
— 昨年から導入しているシステムにフィットしているということは、逆に相手チームが作戦を立てやすくなった、ということにもなりませんか?
基本的には、どのチームもビデオ分析を行えばわかります。それはそれで構わない。
相手は、フロンティアーズのパスユニットは、こういうことをやってくると対策を立てますよね。でも私たちは、相手のディフェンスを見て、自分たちが今持っているパッケージのどれが通用するのか、最適なのかという出し方をします。私たちがベストなものを出していけばいいので、そこは気になりません。
— 試合前に、最善と思ってチョイスしたものが、実際に対戦して、使えないという場面もありますよね。
それは、プレーの幅を持っているので、これがダメならこちらのプレーをやりましょう、と都度切り替えていくことになります。なので、その持ち駒が多く、それぞれの精度が高ければ高いほどいいわけです。
去年から導入しているシステムを続けているからこそ、ベースとなる幹がしっかりとしてきたし、そこから枝葉も横に伸びていき、よりしっかりとした木になりつつあります。
特に今年は、秋山や松林といった素晴らしい新人も入ってきて、ほかの選手たちにいい刺激を与えてくれました。選択肢が増えてきたのも、レシーバー全体で刺激し合えたからこそだと思いますね。
— 相手チームに対して最適なパッケージを選んでいる、ということは、プレーの上手下手ではなく、そのチームに最適なパッケージなのかどうか、ということになりますよね。つまり、能力が高くても、試合に出られない可能性もありますよね。
そうなりますね。選手たちがそういうやり方に100%満足しているか?というと、決してそうではないと思います。もっとやりたい!という気持ちは、プレーヤーとしては当然出てくるはずです。
しかし、社会人になり、ゲームまでに3回しか練習ができない等といった限られた時間の中でよりよい結果を出すためには、それぞれがフォーカスするポイントを決めていく必要があります。フォーカスすることで、ゲームプランとして計算できるものを早く作り上げることができます。
私たちは、いかに勝てる布陣を作れるかを考えなければならないし、手を広げすぎて、どれが使い物になるか、ならないか、分からない中途半端な状況ではゲームプラン数も減ってしまいます。選手には、そこを理解してもらうようにしています。
— 選手には理解してもらっていても、満足していない。その状況下でプレーを選択して、選手に伝える役目は大変ですよね。
それは、しょうがないですよね。選手には、私の役目を理解してもらえるように「今年はこういうやり方をしますよ」というのを前もって言っていますし、選手の強みを活かすことは常に意識しています。
— フォーカスすることで、早く結果を出せるというメリットがある一方で、デメリットもありますよね。
そうですね。完成度を早く高めるというメリットがある一方で、選手のプレーヤーとしての幅も狭めるというリスクがあります。しかし、社会人みたいに週3回しか練習する機会がなくて、短い練習時間の中で精度をあげると考えると、昨年と今年やっていたやり方も間違いではないと思っています。
しかしながら、うちのレシーバーの選手たちは、すごくレベルも高いし、身体能力も高いので。時間をかければ、他の選手が出来ているルートも、きちんとできるような選手がいっぱいいます。だからこそ、選手たちはもっとやりたい!という気持ちにもなり、活躍の場も広げていきたいとなっていくはずです。
— たとえば、全部こなせる選手って?
秋山は「こなせる」と言えると思います。あとの選手たちは、個々人で特徴が異なります。フィールド全体を見渡せて、コーチ的な役割を担える選手、ビッグプレーを生み出して、リズムを作る選手、身体能力が高い選手など、いろんな選手がいます。
大きく分けると、全体的に満遍なく網羅できている選手と、一部が突出している選手の2つに分けられますが、秋山の場合は、満遍なく力を発揮できるだけでなく、突出した能力も見せてくれる。両方の素質を持っているという意味では、ブレナンもそうですね。だから、彼らをキーにゲームプランを立てることができます。また、突出したものを持っている選手たちについても、彼らの能力を活かしたゲームプランを考えることができます。
— それ以外の選手たちは?
いわゆる満遍なくできる選手たちには、どこのポジションでも補えるようになってほしいので、全体的なレベルを上げておいてほしいんです。その中で自分の強みは見出していって磨いて欲しいと思っています。
個々人の選手たちの善し悪しを踏まえながら、どのようなユニット、戦略でいくか考えていきますので、それこそゲームプランは、何十通りにもなります。
— 何十通りもあると、考えるだけで疲れそうですね。
たしかに、試合前はかなり考えるので、疲れますね。ただ、試合が始まってしまうと、信頼のおけるユニットですので、あとはそこに少しずつスパイスを効かせていきます。
<後編に続く>
インタビュアー・ライター:長富 怜子